第4章 隠し味
こんな気持ちがよぎる。昼間の青空から漆黒の夜空へと変わったように、あの空の様な瞳は――五条先生は今はもういなくなってるんじゃないかって。昼のうちに元の世界に戻ったんじゃないかって。
頑張って買い物したけど、もしそうだとしたら、集めた戦利品も使ったお金も水の泡だ。そう思ったら自分で自分がおかしくなった。買った服と日用品は即刻フリマに出品か、って苦笑いが浮かぶ。
だけど残り30メートルでアパートに到着って所まで来た時、それはなかったのだとわかった。自室の窓から明かりが漏れている。五条先生はまだこの世界にいる。
なんだろう――。変な気持ちだ。
私は五条先生に呪術廻戦の世界に戻って欲しいと思っている。朝もそう願って家を出てきた。五条先生は好きなキャラのひとりだし、彼の力になろうと、戻れるよう協力しようと決めた。
なのに、彼がまだ私の部屋にいるという事実が胸の中を穏やかにする。
部屋のカーテンの隙間から漏れ出たなんて事ない小さな光は、なぜか陽の光のように温かみがあって、それはかけがえのないもので、闇夜を照らす壮大な明かりの様にさえ感じた。
……再び歩く速度を速める。早く帰らなきゃ。私もだけど、五条先生もお腹すいちゃってるよね。
もう一踏ん張りだと、荷物をぎゅっと強く握りしめた。