第4章 隠し味
もうすぐ9時だ。それは五条先生に告げた帰りの時刻。両手は買い物袋でいっぱいになった。たいして買ってないけど無駄に体積が大きい。
ぶら下げた荷物が邪魔で、タクシーを使いたかったけど、財布の薄っぺらさを思い出して我慢する。ケチる。
家路の途中でスーパーに寄り、食材を買ったことで更に荷物が追加された。指が引きちぎれそう。もう何もかも限界!
お腹の虫がぐぅと鳴る。血糖値が低いのかふらふらしてきた。お昼ご飯がいつもの半分以下だったのが災いしてるのだろう。大量の袋をぶらさげて、夜道を蛇行するふくらはぎはパンパンだ。
見上げると冬の寒空に星が瞬いている。今日はいいお天気だったからかいつもより見える星の数が多いようだ。
そんな風に夜空を見ていたら、カツカツとさっきまでアスファルトを突き鳴らしていた足音が弱いものへと変わった。