第4章 隠し味
スポーツショップに入り、バスケコーナーに行くと、まさにビンゴ。200センチまで対応しているウェアーが幾つかハンガーに掛けられて並んでいる。
「あったー」
まずはホッと胸を撫で下ろした。しかもダサーいジャージではなくって、パッと見た目スタイリッシュな服ばかりだ。
これでここ2、3日はなんとかなりそうだ。同居が長引いた場合は通販で高身長に合う服を探せばいい。
『一番人気』と書かれた派手なポップの横には、オフホワイトの薄手のトレーナーが置いてあった。
袖には三色のアースカラーがストライプ状に切り込まれていてオシャレだし、裏起毛も暖かそうだ。
二着くらい買ってもいいかなって上下でコーディネートされてる服の値段のタグを見た。
『¥19800(税別)八村塁プロも愛用』
――んじゃ、こりゃァアア!
どういうこと? ゼロ一個、マジックで消していいですか? こんなの二着どころか一着でも無理だ。税金入れたら2万超えじゃん。八村選手とお揃いとかいいからまけてよー。
切実な思いでお財布の中をのぞいた。わかってはいたけど、この額を持ち合わせていない。
しばし立ち尽くしたあと、手に持ったハンガーをそっと元の場所に掛け直した。すごく格好いいけど、五条先生に着てもらいたいけど、これは買えない……。
大好きな呪術グッズだって、積み立てして厳選して買ってる私にとって、諭吉が飛んでいく出費には限界があった。