第14章 再会
カチカチの氷が溶かされて水になるように私が溶けていく。
眠っていたものを呼び起こされるような感覚――。
五条先生は元の世界に戻る直前に私にこう言った。
"必ず君を助けるよ、記憶障害も何もかも"
頭痛が軽くなり、静かにゆっくりと目を開ける。まだ混沌としている。分からないことだらけだ。
だけどただ一つ、揺るぎない確信があった。
渋谷事変が起きた日に五条先生が一緒にいた特別な子。それは……きっと。
「悟」
名を呼んだ。私はいつもそう呼んでいるような気がして。五条先生がビクッと反応したのが分かった。
「今……僕のこと呼んだ?」
「うん、呼んだ『悟』って。教えてほしい事がある。渋谷事変が起きたハロウィンの日、あなたと一緒にいた特別な子っていうのは……私?」
悟の瞳が揺らいで、美しいブルーの虹彩が輝きを放つ。
澄み切った空のような碧眼でしばらく私を見つめた後、「あぁそうだよ」と彼は優しく笑った。