第4章 隠し味
自分の貧乏生活が悲しくなってくる。五条ワイシャツ1枚に私の1ヶ月分の労働賃金が負けてるなんて信じたくない。
「えーい、この際、服なら何だっていいだろう。ステテコだろうと腹巻きだろうと五条先生なら着こなすでしょ」
冬の空に向かってやけくそを言い放った。けどその空を見て浮かび上がってくるのは、青い瞳。今朝玄関で見送ってくれた五条先生の立ち姿。
壁に斜めにもたれて腕組みしていた彼はすらっとしていて、クロスさせた足はどこまでも長くて、パリコレモデルみたいに美しかった。キラキラしてた。
やっぱりステテコ五条なんてダメだ。そんなの二次創作でも見た事ない。需要がない。五条悟はかっこよくあって欲しい。
もう一度、意を決してスマホを取り出し高身長の服を取り扱うお店がないか調べる。お昼休憩の残り時間と睨めっこだ。
昼食を取っている余裕はなく、スマホ片手にゼリー飲料を10秒チャージし、栄養バーでカロリーを補強する。
Google先生は近くに的確なアパレルショップを見つけ出す事が出来ず、そのまま私の昼休みは時間切れとなり、本日二度目の遅刻がないよう、慌てて職場へと戻った。