第14章 再会
カバンから折り畳み傘を出し、パッと広げて駅構内から一歩踏み出す。
「可愛いおねーさん。相合傘してくれない?」
後ろから聞き覚えのある甘ったるい声がして振り返ると、マロンクリームみたいな巻き髪をしたスミレさんが居た。
「もちろんいいですけど、傘小さいから雨の雫がかかったら綺麗な巻き髪が取れちゃうかも」
「帰るだけだし崩れても構わないよ。それに私ちっこいババアだから十分収まる」
スミレさんはさっと傘の中に入って、言葉通り隣にちょこんと収まった。ふわりと香水の匂いが漂ってくる。
「ぴっちぴち、ちゃぷちゃぷ、らんらんらん」
鼻歌を歌いながらスミレさんは歩き出した。その歩幅に合わすようにして隣を歩く。
思いのほか歩行の息がピッタリで、2人とも肩が雨露で濡れることはなかった。