第13章 ハロウィンの花嫁
浮いた体は思うように動かず螺旋状に流されていく。
羂索が作り出したブラックホールのような黒い結界が広がっていくのが見えた。
体が回転し、視界がぐにゃりと変形する。このまま結界の中で捻りつぶされるのだろう。
走馬灯ってやつかな。悟と初めて会った子供の頃を思い出した。
菜の花畑で隠れんぼしたこと、星漿体任務で瀕死になったと聞いて駆け付けたこと、傑さんが離反してしばらくの間、寮で寝泊まりしたこと、そのときずっと手を握っていたこと。初めてのキス、婚約、そしてウェディングドレス。
映写機のように写し出される私の記憶はなぜか悟との思い出ばかりだ。
頬に一筋冷たい雫が流れたのを感じた。ひとつだけ後悔していることがあった。ちゃんと告白したことがなかった。
――さよなら悟。もし最後に顔を見れたなら、これだけは伝えたかったな。あなたのことが好きでした。ずっと、ずっと、ずっと前から……。