第13章 ハロウィンの花嫁
手に取ってみると、胸元には技巧を凝らしたレースの刺繍が施され、スカート部分はチュール素材が幾つも重ねられてふんわりしている。
後ろに長く続く裾部分にもふんだんに花柄のレースがあしらわれていて細かな宝石がドレス全体にちりばめられている。
それが本物のウェディングドレスだと気付くのに時間はかからなかった。衣装を前に、もう一度悟が書いたメモを読み直す。
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これ着て式場で僕の横に立ってほしい。僕はあの事件がなくても万愛と結婚したいって思ってた。家柄とか婚約とかどーでもいいんだよ。万愛といると僕はひとりじゃないって思えんの。
結婚して、万愛。
君を幸せにしたい。
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「悟……」
胸がいっぱいで何も言葉が出てこない。愛情が溢れ出していつもみたいに術式に着火しそうになった。
だけどそれが暴走することはなかった。陽の光を浴びたような温もりが広がるだけだ。