第13章 ハロウィンの花嫁
「万愛に大事な話があったんだけどね」
「行ってきて。仕事だし」
「デート中の僕を呼びつけた代償は大きいよ。敵にわからせてやんないとね」
「頑張って。じゃあ、ハロウィンパーティは終わりね。婚約の話もまた今度」
婚約話がこじれると、こうやって先延ばしするのもいつものことだ。
「いやまた戻ってくるよ」
「え? 私の事なら気にしなくていいよ」
「待っててここで。ハロウィンの仮装してさ」
これって言って紙袋を渡された。悟が持参してきた衣装だ。袋の中には大きな箱が入っている。
「ほんとはこんなタイミングで渡すつもりじゃなかったんだけど着てみて」
「でも、ひとりで仮装してもなぁ」
「いいからいいから。渋谷から戻った時に見たいんだよね」
「そこまで言うなら……着替えるけど」
執拗に言うからどんなコスチュームなのかと気になって紙袋をのぞこうとすると、さっと手で制される。
「ちょっと待った」
悟はしばらく私を待たせてペンで何かを綴り、そのメモを紙袋の中に入れた。