第3章 下着
玄関先まで来たから、五条先生の真向かいに立って目を合わせた。
「ひとつ、宅配の人も含めて誰が来ても玄関に出ない事。ふたつ、クローゼットの中を見るのはいいけど収納ケースの中は見ないこと。下着が入ってます。以上」
五条先生は「りょーかい」って返事した。下着が入ったケースの中には、呪術廻戦のコミック12巻以降も隠してある。これも"五条先生は獄門疆を出たとしても呪術界を追放される" だとかそう言った情報を遮断するため。
これで先生が下着に興味を示さなければ、読むことはないだろう。
そこは信用した。五条先生の様な人間は理由もなく隠れて下着を見たりしないと。見るなら堂々と見る人だと。――ちなみにこれはわかる人にはわかるだろうけど0に出てくる名言パロです。
……んなこと、どうでもいい!! 仕事行かなきゃ!
靴べらを使ってヒールを履き、振り返ってもう一度五条先生を見上げる。先生は、足をクロスさせて腕を組み、少し斜めに壁に寄りかかって立っている。背は天井に支えそうなくらい高い。
「えーっと、生活に必要なものや着替えを買って帰るから遅くなります。9時には戻る予定です」
「色々すまないね。気をつけて。仕事頑張ってね」
「はい。それと……もし、私がいない間に元の世界に戻れそうだったら、その時は私の事は気にせず行ってくださいね」
「あぁ、わかった」
「戻ったら、過酷なこともあるかもしれないけど、お元気で」
五条先生は軽く二度、首を縦に振った。もうこれで言い残すことはないだろう。言わなきゃいけない事は全て伝えたと思う。
けど、今日帰ったらもう五条先生はいないかもしれないと思うと、少しだけ名残惜しかった。