第12章 ファーストキス
最強になったのは知ってる。その前からものすごく強いことも。
それでも私は術式を使えるようになったら悟を助けるんだってそう思って生きてきた。
心も体も守りたいって思ってるこの気持ちを悟はきっと知っている。
「僕を守るなんて言うのは世界中探しても万愛だけだよ」
穏やかな声が風に乗って耳に届く。
ふと傑さんの顔が頭に浮かんだ。傑さんとなら時に守り合える関係になれたのかななんて、考えても仕方のない思いが心の中を素通りする。
颯爽とした悟の横顔を眺めていると、急に悟がこちらを向いて、私のおでこを人差し指でトンっとつついた。
「よーく言っとく。僕を守ろうとして毒饅頭食うような真似すんなよ」
「……そんなことあったな」
子供の頃の話だ。五条家の訓練だとは知らず、後先考えずに毒だと思った饅頭にかぶりついて、悟に呆れ顔された。