第11章 硝子
夏油と五条と三人で談話室にいた時、それとなく私が話題にした。
「五条、万愛ちゃんまた綺麗になったな」
「ぁあ? どこが。別に変わってねーだろ」
「私も硝子と同じように思ったよ。悟は心配だろうってね」
「心配? 心配ってなんだ」
「男に決まってるじゃないか。告白の一つや二つされてるだろう。初めての彼氏がもういたりしてな」
ハハって愉しげに笑う夏油とは対照的に、五条は怪訝そうに眉を寄せた。"何言ってんだよ"みたいな顔してる。
「んなわけねーだろ。万愛はまだガキンチョじゃねーか」
「それはどうかな。もうそういう年頃だと思うよ。恋愛に興味があってもおかしくない」
「ねぇよ。万愛を一番知ってるのは俺だからな。ついでに色気も胸もねーわ」
テーブルに頬杖をついてそっぽを向いた。
万愛ちゃんのことを大事にしてるのは傍から五条を見てれば誰でも分かる。
だけど、本人はその胸の真ん中に沸き立っている特別な感情に微塵も気付いていないんだろう。