第11章 硝子
ジリジリと朝から鳴き止まない蝉さえも呆気に取られて一瞬静かになったような気がした。五条がこちらに顔を向けた。
「んだよ硝子も傑も気持ち悪りぃ顔して」
「その言葉、そっくりお前に返す」
「は?」
これはとんでもないシスコン、ブラコンなんじゃないかと夏油と顔を見合わせた。
五条がシスコンとかネタだよな。面白いじゃんと思って眺めていると五条は万愛ちゃんを近くまで連れてきておもむろに紹介を始めた。
「こいつが万愛ね」
「はじめまして……五条万愛です」
「緊張してるみてぇだから、ビビらせんなよ」
五条のその気持ち悪い気回しが一番ビビんだよ、なんて言える訳もなく、よろしくねと挨拶した。続けて夏油が口を開く。
「初めまして万愛ちゃん。悟、可愛い妹じゃないか」
「妹なんてひと言も言ってねーけど」