第11章 硝子
それから五条は万愛ちゃんを木陰に置いて、鼻歌まじりにひとり自販機に向かい、炭酸飲料を買って彼女のもとに戻った。
「クソあちぃーから、ちゃんと水分取れよ」って缶を渡している。
五条が女の子の面倒をみている。――今、見ている光景は幻覚かと疑いたくなったがプシュッと音がした時、もうひとつ目を疑った。たまらず隣にいる夏油に話しかける。
「おい今、五条がジュースのプルタブ開けてやったよな」
「あぁ。万愛ちゃんが少し開けにくそうにしていたのを見て、秒で開けてやったね」
「そんな事するのか……あの坊ちゃん育ち」
ジュースを受け取った万愛ちゃんはそれに慣れているのか、にっこりと笑って返した後、ごくごくっとジュースを飲み始めた。「飲む?」って五条にも分け与えて飲んでる。
分けて飲むだと!? 五条家は金持ちだろ。
こんな習慣があることにびっくりする。なんだこの仲の良さは? 私も夏油も揃って口ぽかーんだ。