第11章 硝子
具体的な手法に話が移った。
「五条との思い出がそのシャボン玉に沢山包まれてるんだとしたら、それを呼び起こすような刺激を千愛ちゃんに与えることだな」
「脳への負担は?」
「頭痛は起きるだろうが問題ない。本人も毎晩苦しんでるんだ。王子様のキスで起こしてやれよ」
硝子からいきなりくさいセリフが飛び出して、吹き出しそうになった。
「まぁ……うん、そうね」
「なんだその返事は。こっちが恥ずかしくなるだろ」
硝子が困ったように前髪をかき上げた。
かつてこの高専で、青春と呼ぶのにふさわしい日々を過ごしていた頃、硝子や傑とこういうノリで話していたなと懐かしく思う。
「助かったよ硝子。サンキュ」
「もし万愛ちゃんを取り戻したら……今度こそ婚約話、進めろよ」
「言われなくてもそのつもりだよ」
「友人としては何年も両思いこじらせてんのは見るに耐えないからね」
「それは僕じゃなく万愛の友人として、だろ?」
「それ以外に何がある」
僕は笑って立ち上がった。硝子の友情に軽くもう一度礼を言って。