第11章 硝子
「寝相がそれかも」
「ねぞう?」
「千愛と同じベッドで寝てたんだけどさ、毎晩激しくぶつかってきたから僕はいつも彼女を抱き止めて眠ってたの」
硝子がじとっとした目で僕を見た。ひとつ咳払いが入る。"まさかオマエ"っていう軽い蔑視だ。無言の圧が伝わってきた。
「ヤってるわけないでしょ。信用ないねぇ」
「はっ、どうだか。まぁそれは今どうでもいい。それで?」
「ひょっとしたら睡眠時に頭ん中にたまった呪力の膜を放出して、記憶を取り戻そうとしてたのかもしれない。けど天元様の結界が敷かれていない世界でそれは難しくて動き回ってたってとこか」
もしそうやって懸命に呪力を解放しようとしてたのなら、千愛が記憶を取り戻せる可能性はありそうだ。