第11章 硝子
それから救出に向けて、羂索の話、千愛の記憶障害、激しい頭痛の症状、そして記憶を復元出来る可能性や脳への負担などを話し合った。
情報を整理し、導き出した結論はこうだ。
――千愛がこちらの世界に住む人間だという記憶を取り戻せば、呪力が能動化され、獄門疆に通じる結界を通って救出できる。
簡単に言うと、記憶が戻れば体が呪力を感知し、次元を超えるためのパスポートを手に入れられるってこと。
パスポートがないまま千愛を結界内に引きこもうとしたから弾かれてしまったっていうロジックだ。
「万愛ちゃんはこちら側の記憶を完全には失ってないんだろ?」
「僕が抱きしめると千愛は懐かしい気がするって言ったんだよね。だから記憶が丸ごと吹っ飛んでるわけじゃなくシャボン玉みたいな呪力の膜で、大切な記憶は包んで守ってんじゃないかって」
「なるほど。だったら記憶を取り戻せる可能性はある。そのシャボン玉を割るようなエネルギーの放出を万愛ちゃんはやってなかったか?」
「……あぁ」
ひとつ思い当たる節があった。