第11章 硝子
カツカツと階段を降りる速度を速める。
赤い光が髑髏を覆っているうちは獄門疆の中から念じた場所へとワープ出来るみたいだ。
千愛の部屋のクローゼットに移動した時も僕は万愛の事を考えていた。
渋谷事変が起きたあの日、すぐ戻るからここで待っててって言い残して部屋を出て行った後、僕の帰りをずっと待っていたであろう彼女の事を――。
地下への階段を降り切ると硝子のデスクがある部屋の入り口へと通じる。
そこまで来てふいに足が止まった。硝子が僕に言った言葉を思い出したからだ。
――だらだら付き合ってないで、いい加減、万愛ちゃんをどうにかしろ。
はぁとひとつため息が漏れる。
硝子に会ったら、また万愛とのこと詰められんだろーな。……別にいいんだけどさ。