第11章 硝子
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――30分前、僕は異次元から獄門疆の中へと戻ってきた。
獄門疆に戻ると、髑髏たちが再び僕を封印しようと取り巻いて来たけれど、赤い光がそれらを覆って、拘束力はないに等しい状態だった。
この赤い光の発動条件は、おそらく僕と千愛が互いを想う気持ちと関係している。
今もまだ千愛は異次元から僕のことを思ってくれているのだと感じる。
だが時間的余裕はあまりないだろう。
別れ際に僕を信じててって、必ず君を助けるって千愛に伝えて来たけど、いつまで僕を待っていられるかわからない。
あの世界では時の流れが早かった。ここと4年近く差が生じていて、こちらの1日が異次元では数ヶ月に値する。
もし千愛が僕を忘れようとして、別の誰かを愛したりなんかしたら、赤い光は消滅して異次元への結界が閉じられてしまうかもしれない。