第3章 下着
冷蔵庫から卵とベーコンを取り出す。ハーフサイズにカットしたベーコンをひらっとフライパンに乗せてガスに火をつけた。
弱火で炙ると脂肪分がじゅわぁっと溶け出して、すぐに香ばしい匂いが立ちこめてくる。ベーコンの油がフライパン全体に馴染むと、パチパチと油が跳ねる音が鳴り、きゅうっと縮んでカリカリに焼けてきた。
こんがりとしていい匂いだ。裏返しして、ベーコンの上に卵を落とす。
「五条先生は半熟卵、平気ですかー?」
「大丈夫だよ」
その言葉に軽く頷き、フライパンに蓋をして火を弱める。卵に火を通す間に、トースターにパンをセットした。
ベッドの淵に腰掛けて五条先生はニュースを見ている。鼻筋の通った綺麗な横顔だ。
それを見て、今気付いたんだけど、そういや朝起きた時からずっと裸眼でアイマスクをしていない。
「五条先生、目を覆わなくても大丈夫なの? 疲れないの?」
「あぁ。何ともない、かな。なんせ六眼の役割を果たしてないからね」
こちらに一度顔を向けた後、五条先生は前に向き直り、右手を広げた。じっとその手のひらを見ている。それからぎゅっと握って拳を作り、一本ずつ指をばらすみたいにゆっくりとまた手を開いた。
「どうかしたの?」
「いや……呪力がみなぎってこないし、何も見えないって変な感じだよなぁって。一般人はこんな風に世界が見えてんだって初めて知ったよ」
「そっか……それはきっと違和感あるよね」
「物心ついたときから備わってたからね」