第10章 本当の出会い
今まで万愛が俺の前でママって言葉を発したことは一度もなかった。親がいなくてひとりぼっちで泣いてもおかしくねえのに、ママを恋しがった事はなかった。
万愛の泣き声はさらに大きくなった。
「ママ、ママ、おてて握ってママ!」
「うるせーし片付けるぞ。呪いに転じたら厄介だから、一応呪具でやるか」
「ママ……ママ……いない。悟、悟」
急に俺の名前を呼び出した。いきなりなに? ここにいることは多分気づいていないはず。
「悟、悟……万愛を見つけて。おてて握って」
「五条のボンのことだよな。ハハ、坊ちゃんは帳の外には出ましぇんよー」
「悟、悟、隠れんぼ見つけて。ひとりにしないで悟!!……お兄ちゃん」
なんだろうな……。
この時俺は、生まれて初めて自分の中に湧き起こる強い衝動を感じた。
万愛を心底守りたいって。この手で万愛を守りたい。