第3章 下着
声に反応して振り返る。五条先生は顔を洗い終えた様だ。
「爽やかですか? この部屋あまり明るくないし、じめじめしてません?」
「獄門疆の中よりぜーんぜん爽やかだよ。僕なんかずっと骸骨に囲まれてさぁ、あいつら根っからの根暗なんだよね」
「あぁ、あれか。確かに陰気そう」
「僕のギャグのセンスにもついて来れないし、やってらんないっつーの」
「……そりゃホラーマンみたいにホラホラーって笑ったりカタカタ踊ったりはしないでしょうけど」
ギャグっていったい五条先生は獄門疆の中で何をやってたんだろうと思うけど、お喋りに時間を費やしてる暇はないから、スタスタとキッチンへ向かう。
すぐ後ろから床が軋むような足音がするから五条先生は付いて来てるんだろう。
「しかもさぁー、あいつら加齢臭すんの。楽巌寺学長のなんか比じゃないよ〜。何年あの箱ん中で骸骨してんだろな。あぁはなりたくないねぇ」
その言葉にピタリと足が止まった。なんだって!? それは公式にもないマル秘情報だ。近くの紙にささっと殴り書きをする。
" 獄門疆の中は加齢臭がひどい(おじいちゃんも臭う)" と。
よし、これでオッケー。情報の出所は五条悟本人だ。これは貴重な情報だぞぉ。
「何書いたの?」
「なんでもないです、お構いなく」
メモをささっと折りたたんで笑顔を繕う。五条先生は私の言葉通り、構うことなく話を続けた。狭い獄門疆の中でひとりぼっちだったんだから、たくさん話したくなる気持ちもわかる。