第9章 さよなら五条先生
五条先生は驚いたような顔をしたけど、すぐにいつもの飄々とした笑みを浮かべた。
「やっとわかったよ、発動条件が」
「まだそんなこと言ってるの。早く行かないと手遅れになるよ。……大切な彼女のことも」
「その彼女のことなんだけど――」
また赤い光が弱まった。見ると黒いホールはもう五条先生が身をかがめないと入れないくらいの大きさになっている。
私は「黙って」って叫んで、全体重を使って五条先生を結界の方へと押した。
先生はまだ何か言おうとしたけど聞きたくない。
彼女を愛している話をとくとくとして私に未練を残さないようにでもしてるのかな。こんなに女との別れ方が下手くそだとは思わなかった。