第3章 下着
こんなシチュエーションになったら、男の人は反射的にドアを閉めるのかと思ったけど、なぜか五条先生はそのままで、時間が止まったみたいに二人で見つめ合っている。
見つめ合うこと数秒。急に周囲の色が鮮やかに見えて、恥ずかしさが込み上げてきた。
「早く出てって!」
「ごめんごめん、顔洗おうと思ってさ」
慌てふためく様子もなく、五条先生は悠長に踵を返して洗面室から出て行く。
女性の下着姿なんて五条先生は見慣れてるのかもしれないけど、こっちは恥ずかしくて頭から湯気が出そうだ。
鏡に映った私の頬は熟したトマトみたいに真っ赤になってる。さっきまでの寒さが嘘みたいに顔が熱い。
着替えを済ませて洗面室を出ると、私が出てくるのを待っていたのか五条先生はそこに立っていて、再びその透き通る様な青い双眼と目が合った。
「着替えてると思わなくてさ、ごめんねー」
「いえ。私も言ってなかったので」
ほんの少し気まずさを覚えて視線を脇に逸らしたけど、もう一度、五条先生に目を向ける。
「次から洗面室に入るときはノックしてもらえますか? 鍵がついていないので」
「わかったよ。ちなみに……見てないからね」
「そ、ですか」
「クリーム色のブラ以外は」
「がっつり見てるじゃん!!」
抗議と同時に気まずさも恥じらいも一気に吹き飛んだ。
五条先生はデリカシーってやつを覚えようね、デリカシーを!!