第8章 五条悟のひとりごと
千愛の様子はひどくおかしかった。聖地巡礼なんて本来もっとキャッキャ言ってはしゃぐもんでしょ。オタクじゃない僕にもなんとなく想像できる。
だけど千愛は、どこに行っても怖いくらい真剣で切実な泣きそうな顔をしていて、僕の中で変な胸騒ぎがしたんだ。
傑の時と同じで、僕は千愛の大切な何かを見落としてるんじゃないかって。
だから渋谷事変の生解説をしながら僕はずっと千愛の反応を見てた。
そして僕が無量空処した場所に立った時、君がひどく動揺して、僕のことを漫画のキャラクターなんかじゃなく、ひとりの人間として必死に思いを寄せてる姿を見た時、導かれるように魂の形が見えたんだ。
それは――僕が愛してやまないたった一人の特別な女の子と全く同じものだった。