第7章 急接近
「一体なんの話をしているの?」
「僕は千愛の前でありのままでいれるって話だよ」
張り詰めた空気がふわっと緩んだような気がした。五条先生は会話の中に溶け込むように、でもはっきりとありのままでいれるとそう言った。
嬉しかった――とても。
彼は呪術界で起きた苦境を乗り越えるのに"ひとり"ではなく私を隣に置いた。
それは不安だったから? 私が男友達の所に行こうとしたから?
その真意はわからない。弱さを見せるような人じゃないし、そもそも弱気な気持ちがあるのかもわからない。
でも彼は、映画で見せた教室での五条悟とは違う選択をした。
デートの帰り道、私たちは降り注ぐ雨を一本の傘に入って一緒に凌いで帰った。
それと同じように、彼はひとりで雨を受け止めるのではなく、私を同じ傘に入れた。ひとりではなくふたりを選んだ。