第7章 急接近
胸の真ん中がきゅっと鷲掴みされたみたいに痛い。五条先生は今も私の手首を離そうとしない。どこにも行かせたくないって感じで。
「でも……私がいたら……五条先生はありのままでいれないでしょ。心の内を吐き出せないでしょ?」
「そう思う? だったら千愛はまだ僕のことわかってないね」
立ったまましばらく無言で見つめ合った。
ひとりにすんなよ、ってさっき私に言った言葉がまだ耳の奥でリフレインしている。
それからぼんやり頭の中に、五条先生が映画で乙骨憂太に告げたセリフが思い浮かんだ。
"一人は寂しいよ?"
……。
私はまだ肩にかけていたバックをゆっくりと下ろして床に置いた。