第7章 急接近
「千愛はひとりの女の子だよ」
重たく言われたわけではない。かといって軽く口先だけで言われた感じでもないその言葉に心が揺れ惑う。
恥ずかしいけど嬉しいような変な気持ちだ。
「そうですか」
黙りこみそうになったけど、もう少し聞いてみたかった。それは渋谷デートで見せたおかしな言動の理由を知りたかったからだ。
思い切って踏み込んだ。
「それってどういう意味?」
「ん? そうだねぇ。千愛は僕にとって特別な子ってことかな」
「特別……」
「ん。僕はもう上がるね。千愛はゆっくりつかって」
先生が立ち上がったから、変なところに目が行かないよう咄嗟に視線を脇に逸らした。
少しして視線を戻すと彼の広い背中が見える。それがまた美しくて逞しくてぽうっとする。
浴室を出る前に五条先生はもう一度振り返った。