第7章 急接近
「取ってあげる」
そう言って体を前傾させた。
「ちょっと待って、今動いたら」
ざばあっとお湯が波立った。先生は軽く立ち上がってナメクジを捕獲しようとしたみたいだ。
私との距離がぐっと近づく。膝を抱え身を縮めて五条先生の背後に移動しようとしていた私は、湯の量が多いもんだから浮力でお尻が斜めに滑り、バランスを失った。
「きゃっ!」
転覆しそうになって反射的に五条先生の腕を掴む。触れない約束だったけど無理だった。
湯船に溺れそうになる私を五条先生はぐいっと腕の力だけで持ち上げて、そのまま抱えるように私の背中に手を回した。
「大丈夫?」
「……ごめん。滑ってしまって」