第7章 急接近
古い木造アパートだから、隙間から入り込むことがたまにあって、私はナメクジ用の駆除剤を進入路になりそうなところに時々撒いていた。
今は冬だから出ないだろうと油断していたのだが、五条先生が住むようになって部屋の温度が一定に保たれ、暖かいから入ってきたんだろう。
五条先生は顎に指を掛けて珍しそうに観察してる。
「こんなのが入りこむお風呂ってあるんだね」
すんごい呑気なこと言ってる!
そりゃ五条家の大理石のお風呂にはナメクジなんて無縁でしょうよ。寮には出たりしないのかな?
どっちにしても恐怖でそれどころじゃない。五条先生は何を思ったのか指先でツンってそいつを突っついた。ナメクジが体をよじるようにくねらせる。
「きゃああー!!」
「だいじょーぶ。僕の後ろに隠れときな」