第7章 急接近
ちゃぷんってお湯の音のみが響く。特に話すこともなくて静かだから余計に水音が際立つ。
五条先生が首筋をさすると、その動きで再びちゃぷちゃぷ水面が鳴り、私は沈黙に耐えきれなくなった。
「あの……湯かげんはどうですか?」
「あぁ、気持ちいいよ。あったかくて」
「私が入ってぬるくなってない?」
「ぜーんぜん」
「じゃ温度はこのままで」
……なんだこの会話。銭湯の番頭さんじゃないんだから。お湯の温度は私も一緒に浸かってるんだから適温なのわかってるっちゅーねん。
ぎこちなさしかないけどこんな事しか話せない。再び沈黙の時間が続いた。
ずっと心臓はドキドキしている。
先生は目隠ししているから私の姿は見えなくてもこっちは五条先生の上半身が見えている。
たくましい上腕と厚みのある胸板。無駄のない男らしい筋肉。私の体とは何もかもが違う。