第7章 急接近
「伊地知とおんなじような息吐くね」
「えっ? それは違うと思うけど。伊地知のは、はぁぁ……だから」
やりきれない感じの深いため息をついてみせた。
「私のは、はぁーだから」
心地よい息をたっぷりと吐く。
「も一回、伊地知のやってみて」
「はぁぁ……」
「千愛は?」
「はぁー」
「伊地知のは?」
「はぁぁ……って遊んでるでしょ、もう!」
ウケるって言って笑ってる。
目を覆ってる五条先生を久しぶりに見たけど、この姿を見るとますます五条先生って感じだ。
それにしてもお風呂場で何やってんだか。まるで男女の雰囲気がなくて、私のことはひょっとしたら妹みたいな感覚なのかな、と思った。
渋谷デートで親密度が増したのはそっちの感情だったかと。
しかしそう思ったのも束の間。笑い声の残響が消え去った後は、お風呂場がシーンとなった。会話のない時間が流れる。