第7章 急接近
「手、ちっちゃいね」
五条先生が私の手を覗き込んで言った。じっと見られたら、今、私達は手を繋いでるのだと実感して無性に恥ずかしい。
「そかな? 普通じゃない?」
「僕の掌の中にすっぽり収まってる。可愛いよね、ちっちゃいの」
なんとも照れくさくて、はにかむようにして笑った。照れ隠しってわけでもないけど、私はごそごそと鞄からスマホを取り出して、ある動物の写真を彼に見せた。
「ほら。アライグマの手よりは大きいよ」
「何と比べてんの」
クスって笑い合う。どうでもいいお喋りをした事は分かってる。ただ何か言わなきゃ恥ずかしくていられなかっただけ。
私がスマホを鞄の中に片付けると再び五条先生は私の手を取った。温かなその手をもう一度私も握り返す。
朝から始まったどこか甘ったるいデートの雰囲気は、アパートに着くギリギリになっても続いていた。