第7章 急接近
シンクの横には、黄色の水玉マグとブルーの水玉マグが並んで置かれている。使う事はもうない。ただ飾ってあるだけ。
だって、黄色マグばかり使ったら傷んで汚れてしまいそうだし、ブルーマグは私のじゃない。
それにマグ同士を離したくなくて、いつも一緒にしておきたくて使わず隣に置いている。買った時から仲良しのペアマグだったから。
マグカップは何も変わらずそこにある。
私の生活が変わっても、時が経っても、あの人がいなくなっても。ずっとそこにある……。
じっとマグを見つめていると、目の奥がじわっと熱くなり、水玉の絵柄がぼやけてきて、しばらくすると、それは滲んでまるで形を成さなくなった――。