第6章 デートの練習
そう思ったら涙が出そうになって、慌てて先生から視線を逸らす。するとそれに気付いたのか先生がこちらに顔を向けた気配がした。
「……なぁに泣いてんだよ」
指先が伸びてきて、目元に触れてくるからささっと溢れ出そうになったものを拭って、顔を横に振る。
「泣いてないから」
「可愛いメイク、台無しじゃん」
「僕がお化粧直ししてあげよっか?」なんて言ってくる。いつも通り明るい……。
やっぱり五条悟は特別な呪術師だと思った。強い。
街頭ビジョンを見上げていた時は少なからず動揺していたはずなのに、感情が乱されたとしても、それで彼自身が崩れることがない。
思い返せば高専時代、夏油が離反した後も五条悟は闇堕ちしたり自暴自棄になったり、はたまた善悪の基準にしていた夏油と同じ道を歩むなんてことはせず、親友を救えなかった傷を心の中に秘めて未来に目を向けた。並大抵の精神力じゃない。
――だったら大丈夫なのかな? まだ伝えていない呪術廻戦の全てを知っても。
獄門疆の中にいる間に起きた、残酷な現実を目の当たりにしても心が折れたりしないかな?
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