第6章 デートの練習
「座らない?」
先生は私を連れてブランコの方へ向かった。
隣のブランコを指して促されたので並んで腰掛ける。ブランコが揺れてキィッと錆びついた金属音が響く。
「傑は――アイツはさ、思想は歪んでたし、やり方は到底許されるもんじゃないけど、呪いによる犠牲者を出さない世界を作りたくて自分の力を使ったんだよね。結局やってる事は人殺しだったりするんだけど」
「……ん」
「そんなアイツのもがきを向こうじゃ一般人には知らされず、公表されず死んでいったわけじゃん? なにか夏油傑に関する記録があるとしたら胡散臭い宗教家ってことくらいで」
「うん」
「最悪の呪詛師がいたって事を。僕とかつて同じ道を歩んだ特級呪術師が、歪んだ理想を追い求めて、最後は僕に手を下されて終わりを迎えたっていうアイツの生き様が赤裸々に刻まれてんなら、あの目立ちたがり屋は本望なんじゃないかな。例えそれがエンターテイメントだとしても」
「……先生」
空に向かって白い息を吐くその姿はどこか達観している風にも見えた。
夏油が離反してから今までどれだけの思いと時間を重ねてここまで来たんだろう。