第6章 デートの練習
息が止まりそうだった。
乙骨くんの話をしたつもりだったけど、この言い方だと五条悟と夏油傑にも当てはまらない事はない。中途半端な言い方をしてしまったことを悔いる。
だけど、実際そこは呪術廻戦0の大きな見せ場の一つで、私も胸を打たれて涙したところだ。途中入った回想シーンは苦しく切なかった。
答えにくかったけど誤魔化すのは嫌で「はい……」と一言だけ呟いた。
「あの五条先生」
周りに人がいない事を確認して名を呼んだ。どうしても告げたかった。
「百鬼夜行は確かに映画になっているけど、娯楽としてみんな楽しんでるって言うより、そのキャラの人生を共に歩むような気持ちで真剣に見てるから。先生と夏油が最期に交わした言葉もシークレットになっていて、二人にしかわからないようになってる。決して夏油傑の死が見せ物になってるわけじゃないから」
「見せ物、ね」
「……」
「別にいいよそれでも」
「え?」
意外な言葉に驚いて、五条先生の顔を見て二、三回、目をぱちくりさせた。
こんなものを娯楽にしているこの世界に憤りを感じて、私たちのことを最低な人間だと見下しても仕方ないと思っていた。
なのに五条先生は信じられないほど穏やかな口ぶりで……。