第6章 デートの練習
この世界に滞在していれば、呪術廻戦0の予告を見る事があるかもしれないとは思っていた。
人気映画だけあって、至る所で映画の宣伝やコラボ商品が並べられているし、さっきのゲーセンにも0に登場したキャラが置かれていた。
五条先生もそれに気付かないわけはない。だけど私は、映画のことを口にするのが怖くて避けて通っていた。出来たら知らないまま二次元の世界に戻ってほしかった。
呪術廻戦0は、乙骨くんの成長や仲間との友情だけでなく、五条悟と夏油傑の物語も描かれていて、映画ではコミックより描写が追加されていて、最期のシーンも丁寧に作り込まれている。
そんな生々しいものが、こちらの世界ではエンターテイメントとなって公開されているなんて、どんな気持ちなんだろう。
高専で交わした二人だけの最後の時間は、五条先生の胸の内でのみ存在させておきたかったことなんじゃないんだろうか。
決して見せものじゃない。