第6章 デートの練習
当然私たちだけでなく、周りで何人もの人が街頭ビジョンを見上げている。高校生らしき女の子がすぐ近くにいた。
「あ、これ。呪術の映画見た?」
「見た見た」
「面白かったよね」
「里香ちゃん可愛かったー。私、棘さん好きなんだよね。爆ぜろーって」
「五条先生もかっこよかったよね」
「え、それより夏油でしょー。生きてる! ってなった。大スクリーンで見たのヤバい。ラストの五条さぁ、あれ夏油になんて言ったの?」
……こんな会話、とてもじゃないけど聞いていられない。今すぐ五条先生の耳を両手で塞ぎたくなった。
胸が張り裂けそうで苦しくて、たまらず五条先生の服を強く引く。
「行こっ。こっち」
お話してるその子たちから離れる。スクランブル交差点から出来るだけ遠く距離を取る。
振り返ると、もうPVは流れ終わって別の広告に変わっていたけれど、それでも五条先生を引っ張って歩いた。なんて声をかければいいのかわからなくて。