第2章 クローゼット
「先生、お金は持ってますか?」
「金? あぁ、僕ご指名がかかって渋谷に祓いに来たんだけど、そん時、財布は補助監督に預けたんだよね。内ポケに財布入れたまま戦闘とか邪魔じゃん?」
「確かに」
じゃらじゃら小銭の音させながら、漏瑚や花御と接近戦はダサすぎる。落とした10円玉を拾う五条先生とか見たくない。あ、お金持ちは現金、特に小銭は持たないって聞く。カードや電子マネーだよね。
「じゃスマホの電子マネーは? とりあえずそれがあればお金がわりになる」
「スマホは持ってるよ」
制服から出してきた五条先生のスマホをチェックしてみると、電子マネーは−0と表示されていた。残高0円だ。どうやらこの世界に五条悟の口座はないみたい。そりゃそうか。
これはほんとに二次元から来たのかもしれない。無一文で、私の部屋に……。
「とにかくいったん獄門疆の中に戻りましょう」
「どうやって?」
「クローゼットから。通ずる道があるはず」
「いや無理でしょ。塞がれちゃってるから」
「へ?」
ベッドから立ち上がり、クローゼットの中を確認した。隅々まで見たけど、それらしき道はない。次元の壁が封鎖されてしまったみたいだ。って事は完全に五条悟はこちら側に来てしまったの?