第2章 クローゼット
だけど、この男は犯罪者ってわけではなさそうだ。一向に危害は加えてこない。それに、
「僕は五条悟だけど」
最後まで彼はこう言った。話せば話すほどに本人そのものだった。私が呪術界に詳しい人間だと理解した彼は、ここに来た経緯を説明し始める。
獄門疆の中で力を封印されていたけど、急に周りの骸骨たちがしなびれ始めて、赤い光が射したのだとか。
体の拘束が解かれたからその光の方向に向かうと薄い壁があって、それに触れると壁面が崩れ落ち、この部屋へ繋がっていたのだという。それがどうやらクローゼットの中だったようだ。
クローゼットの中で角がぶち当たるような音がしたのは、獄門疆が開門した音だったのか。ひょっとしたら、この人は本当の本当に五条先生かも、なんて馬鹿げた考えが浮かぶ。
ジャンプの本誌では、まだ五条先生は獄門疆の中に封印されている。だけど、もし、何か得体の知れない力が働いて、次元を超えて、時空を超えて、私のクローゼットに彼が運ばれたのだとしたら……。
ヤバめの妄想がぶっちぎってるけど、私の目の前にいるのは五条悟という人間だ。少しずつこの現実に私の脳が対応し始める。