第6章 デートの練習
音ゲーが賑やかだ。五条先生がやる? って言うけど見てるって返事すると、私が知らない流行りのボカロ曲で、しかも難易度マックスでハイスコア叩き出して、周りの注目を集めてた。
「ちょっとちょっと。目立ちすぎだよ」
「あんくらい普通でしょ」
「呪力なしであの反射神経とかどうなの。てか正体バレたらどうすんの」
誰かが、ネットで”五条悟似のやべぇ奴いる!”とかつぶやいて拡散でもされたら大変だ。
「千愛は何かしたいゲームないの?」
ゲーセン内を巡回しながら五条先生が聞いてきた。
「実は一つだけある」
「何? 言ってみてよ」
「悔いのないように言いますと」
「うん」
「マリカーで勝負したい。学生の時やりこんだ覚えがあるんだ」
「僕とマリカー勝負? 悪いけど千愛は勝てないよ」
「自信があるの。コーナリングとドラフトに」
「ド”リ”フトね。ドラフトは野球。こうやってプロ球団が選手の抽選引くやつ」
抽選の紙を引くジェスチャーをしておどけてみせる。
「……」
くっそ恥ずかしいー! 穴があったら入りたい。