第2章 クローゼット
目隠しして制服着てる。腰の位置がめちゃ上っ。足、長すぎだし天井が頭につかえそうだ。男は顎に指をかけて、ぐるっと辺りを見渡してる。
「ここって渋谷じゃなく、パッと見た感じ女の子の部屋だよね」
言い方も仕草も雰囲気もそっくりだ。その時私はぴーんと閃いた。
「そうか。五条悟に変装してなりきって女性の部屋に侵入する新手の犯罪のやり口だな。なんて奴!」
「え?」
「どうせやるなら、ナナミンにして!」
「へ?」
……違った。論点はそこじゃない。ただ五条先生のクオリティがものすごく高いのだ。その目隠しもふわっと立ち上がった白い髪の毛質も、つやっつやのプルップルの桃色唇も、おそらく190センチくらいありそうなタッパのデカさもそっくり。
それならナナミン も寄せれるでしょ! いや、だからそこじゃない。どっちにしても……。
「大好きなアニメのキャラを使って犯罪を犯すとは、許すまじ!」
五条先生のなりきり野郎に、急に強気な気持ちが湧いてきた。ただし110番のボタンはいつでも押せるようにしている。
「君は僕の事を知ってるみたいだけど、僕は知らないんだよね。ひょっとして昔、遊んだことあった?」
うーん、と言って五条先生そっくりの顔が覗き込んで来た。
「記憶にないけどねぇ」
近い近い! 距離が近い! そんなところもご本人そっくりだ。演技力やばいな。遊ぶって女遊びのことかな? ファンブックに書いてた通りの軽キャラだ。芥見先生は五条はやめて七海にしとけって言ってた。
「顔忘れちゃってるかも。ごめんね〜」
「もう演技はいいから。けどまぁ……すっごい似てる。うん、それは認めよう」
動作も声も表情もアニメの五条先生そのもので感動レベルだ。男はまだ私の顔を角度を変えて覗き込んでるからちょっとふざけてみた。