第2章 クローゼット
「ひゃぁっ!」
「ドウカシタ?」
玄関から聞こえたのは、隣の部屋に住むボブ(国籍不明)の声だ。10歳年上のバツイチ、スミレさんと一緒に暮らしてる。
きっと事件現場に出くわしたような私の叫び声に反応してやって来たのだろう。腰が抜けたようなよろけた状態で玄関に向かった。ドア越しに応答する。
「何か音が、音が」
「ダイジョブデスカ」
隣人とは良き関係を築いているのだが、こんな深夜にボブに応答してドアを開けるのもこわい。
「なーに、大型のGでも出た? こないだ部屋にいたからそっち行ったのかもね」
スミレさんの声が遅れて聞こえた。大型Gが住み着いてるなんてそれはそれで恐怖じゃないか! 退治してからじゃないと寝れない。
部屋の電気を付けてドアの鍵を開け、スミレさんとボブに入ってもらった。
「どーしたの」
「クローゼットからガタンって音がしたんです」
「上の階の奴がイラついて地団駄踏んだんじゃないのぉ? 馬券がまた紙屑になったってぼやいてたよ」
「その音とは違うんですよね」
「チガイワカル、イイミミシテルネ」
ボブ、そんな聞き分けを褒められてもあまり嬉しくないんだよ。