第2章 クローゼット
ベッドに深く潜り込んだ。ナナミンクッションを胸に抱く。彼氏もいない二次元を追う残念な女だなんて言わないで。今の生活が私はそこそこ気に入っている。
住んでいるのはワンルーム12畳、家賃5万円の3階建て木造アパートの1階だ。広さの割に家賃が安いのは、建物が築50年だから。
昭和を感じさせる壁の薄ーい住み処だけど、お風呂とトイレは別だし、コンビニや駅も近いし善しとしてる。
12畳の広さはこだわった。それは今寝っ転がってるこのダブルベッドを置くため。私はこの広さじゃないと安心して眠れない。
寝ている間、相当ごろごろ転がるみたいで、セミダブルでも必ず下に落っこちた。過去に何度か頭も打っている。安眠を確保するためにベッドサイズは重要視している。
さて、明日は仕事……。
部屋の電気を消して目を閉じる。ふと瞼の裏に浮かんだのは、悠仁や恵が戦う姿と獄門疆の五条先生。確か裏から開門するんだよね。
もし五条先生が出て来たら話は一気に終盤に向かう気もするけど、それでも早く出てきて欲しい。最強の力で何とかして欲しい。
うつらうつらと睡眠に入りかかったその時だ。ガタンとクローゼットから音がした。
「なに?」
硬いものが壁に激突したような音。
$⌘▽⁂◎
何を言ってるかよくわからない念仏のような唸りが聞こえる。ガタ、ガタガタガタと、角張ったものが震えるような音がした。まるで、ホラー映画に出て来るポルターガイストみたいだ。
"ガタンッ!"
「きゃあぁぁ」
椅子が倒れたような音がして思わず声を上げた。しばらくして、コンコンと玄関から音が鳴る。