第6章 デートの練習
外出時の変装を見たのは初めてで、五条先生をじっくり見れば見るほど、普段とのギャップに思わず笑いが込み上げてくる。
レゲエに片足突っ込んでますみたいな、自称DJやってますみたいな感じ。黒のスウェットと最近通販で購入した、紫のスタジャンの重ね合わせが、さらにそれっぽさを醸し出している。
誰もこのバックパッカーみたいな人が五条悟だとは思わないだろう。
「ふふっ、ふふふ」
「笑うのひどくない?」
「ごめんなさい。変ってことじゃなくギャップがありすぎて。でもまぁ似合ってる」
「何でも着こなせちゃうからね」
「はいはい」
褒め言葉に対して、プラス向きのベクトルが一直線に働くこの自信は毎度ながらすごいと思う。
それからさっきの草団子を買って帰ろうという話になり、二人でお団子屋さんへと向かった。軒下に入って店先のお婆ちゃんに声をかける。
「草団子二つください」
「はい、ありがとうね」
お婆ちゃんが、漆のお盆から草団子を取り出した。ぽたぽた焼きのお婆ちゃんみたいな方で、少しズレた丸メガネが愛らしい。
「ハイカラなご夫婦ねぇ、一本おまけねぇ、お子さんの分」
……財布の中の小銭を掴む私の手がピタリと止まった。
「はひー?」
バイキンマンみたいな声が出てしまった。恥ずかしい。隣で五条先生が、一瞬ぷっと吹き出したみたいな声を上げた。