第83章 #83 激戦
ライナーの鎧の巨人が獣を押さえ込みリヴァイがうなじを削いだが、何故か手応えを感じなかった。
うなじに本体であるジークがいない。
それを後方から見ていたリリアも眉をひそめ、リヴァイの隣まで歩んだ。
「手応えがねぇハズだ。もぬけの殻なら…」
「やっぱり…ジークは『戦鎚の巨人』と同じやり方で本体を隠してる…」
「じゃあこの骨の山から縦1m横10cmの本体を探し出せってか!?そんなこと出来るわけねぇ!!だからもう腹括るしかねぇ!アルミン!!」
アルミンは歯を噛みしめた。
もうやるしかない。
「分かってる!!1分後にここを吹き飛ばす!!車力の巨人と協力してここから離れて!!」
「…アルミン」
ミカサはアルミンを見つめた。
本当にやるのか、アルミンが巨人化すれば確かにこの巨人を破壊出来るが、エレンがどうなるのか。
「僕の攻撃を想定しているエレンがこれで死ぬとは思えない!!でも…この骨をバラバラに吹き飛ばせばエレンやジークの位置が分かるかもしれない!!」
「何かヤバイと思ったら俺達に構わず全力でぶっ飛ばすんだぞ!!」
ジャンはそう言うとアルミンから離れた。
リリアは少し哀しげな顔をしアルミンを見ていた。
大事な友達を自分で傷付ける事がどれだけ辛いだろう、まだエレンを信じたい気持ちはある筈だ。
するとリヴァイがリリアの腕を引いた。
「行くぞ」
「うん……」
"何も捨てる事が出来ない人には何も変える事は出来ないだろう"
エルヴィンの姿がアルミンの脳裏に浮かぶ。
分かっている……捨てなきゃ何も変わらない…
もう…甘い希望は捨てなきゃいけないんだ…
エレンを…
僕が…
と、その時だ。
動物のような巨人がアルミンの背後から現れ、彼を長い舌で絡め捕ると一気に飲み込んでしまった。