第9章 #09 女型の巨人捕獲
壁外調査が開始されエルヴィンが考案した長距離索敵陣形が展開された。
主に巨人と接近するのは初列索敵班の兵士、彼らは巨人を発見次第、赤の信煙弾を発射、信煙弾を発見した兵は同じ様にして伝達する。
それによって巨人の位置を確認したエルヴィンが緑の信煙弾を撃ち、陣形全体の進路を決定する。
こうして陣営全体が巨人との接近を避けながら目的地を目指す事が出来るのだった。
ほとんどの兵士達は今回の壁外調査の本当の目的を知らない。
壁外に出てからあまり時間が経たないうちに、右翼索敵が壊滅、索敵は一部機能しなくなっていた。
陣形の進路は東のまま、ほとんどの者に伝えられていた目的地とは違い、巨大樹の森へと進んでいた。
ウォール・マリア陥落前は観光地だった巨大樹の森も、今では巨人から身を守る重要な拠点だ。
エルヴィンの部隊が予定通り巨大樹の森にへと到達し、太陽の光があまり届かない深い森の中へと入っていった。
「巨人の往来があったようだな。路地に草木が生えていない。荷馬車も進めそうだ。後方に伝達してくれ、これより中列荷馬車護衛班のみ森に侵入せよと」
「はっ!」
エルヴィンと共に森に入ったリリアが木々を見上げ、その木の大きさに圧倒されているとエルヴィンがリリアに声をかけた。
「リリア、この辺りでお前は脇道で待機、リヴァイ班が森に侵入し、姿が見えたら合流してポイントまで誘導しろ」
「はい!!」
手を上げたエルヴィンの合図にリリアが脇道にそれる。
それを暫く目で追ったエルヴィンだったが、前を見据えさらに奥へと進んでいった。
リリアは馬を止め、木々の影に身を隠しリヴァイ班を待った。
鳥の声だけが耳に入ってくる。
嵐の前の静けさか、逆に緊張感が増す。
ハンジ達は拘束器具を設置し終わっただろうか、リヴァイ達は今どの辺りだろうか、エレンは無事だろうか。
そんな事を考えていると、黒の煙弾が上がった。
「黒の煙弾……やっぱりエレンを追いかけてきた…」
エルヴィンの予想は当たっていた。
やはり知性を持つ巨人はエレンを追ってきていたのだ。
リリアはグッと手綱握った手に力を込めた。