第68章 #68 理由
とてつもない地獄のような光景だった。
周りには無垢の巨人が走り回り、マーレ兵を喰っている。
リリアは巨人化の爆風に巻き込まれ、民家の窓を突き破り家の中に吹き飛ばされていた。
割れたガラスが背中に刺さり、血が床に滲んでいる。
「痛い……」
リリアはこれ以上深く刺さらないようゆっくり起き上がり、割れた窓から外の様子を見て絶望した。
「そんな……ナイル兄ちゃんは…?どこ…」
家から出るとリリアを見つけた無垢の巨人が襲ってきた。
リリアは立体機動で屋根に上がるとナイルを探す。
そんなに遠くには行っていない筈だがこの付近にはいないようだ。
「どこ行ったの…?」
その場から離れようとしたその時だった。
シガンシナ区、いや、ウォール・マリア内全体を瞬い光が走り、その瞬間目の前の壁にヒビが入り一気に壁が崩落した。
「え……」
目の前に現れたのは大量の大型巨人、今まで壁の硬質化により隠されていたあの巨人達だ。
そして咆哮と共に現れたのは壁の中から現れた巨人とは比べ物にならないくらいの巨大な骨のような巨人だ。
方向からしてエレンがいた所からその巨人は現れた。
「まさか…地鳴らしが……ならアレは…?エレン?」
地鳴らしが発動したという事はエレンとジークが接触したという事だ。
再びリリアがナイルを探そうと動き出そうとした時だ。
急に辺り一面砂地のような景色が広がり、頭の中で彼の声が聞こえてきた。