第67章 #67 壁内へ
だんだんと聞こえてきたのは雨の音だった。
遠くで聞こえる雷、流れの速い川の音、先に意識が戻ったのはリリアの方だった。
まだ朦朧とした意識の中、最初に視界に入ったのは巨人だった。
巨人は全て倒した筈なのに何故ここにいるのか、しかしその巨人は動くことはなくうずくまり静かだった。
襲ってくる気配もなく、このまま放っておいても大丈夫そうだ。
リリアは辺りを見渡しリヴァイを探した。
ジークが雷槍のワイヤーを引いた瞬間、自分庇い守ってくれたのはリヴァイだ。そのおかげでリリアに大きな怪我はない。
「リヴァイ……」
リヴァイはそんなに遠くに離れてはいなかった。
リリアはリヴァイの側に寄るとうつ伏せになって倒れていた体を仰向けにした。
その瞬間、リヴァイの怪我の酷さに息を飲む。
顔は縦に大きく割れたような怪我をし、何かの破片がたくさん刺さっている。
目は薄っすら開いているが意識がない。
「う、嘘でしょ…?リヴァイ……リヴァイ!」
手を取ると右手の人差し指と中指がない。
近くに落ちているブレードに指が残ったままだ。リリアの体が震える。
息が上がり眩暈がする。気が動転しているのが自分でも分かる。
しかし今ここには自分しかいない、自分が何とかしなくてはいけないのだ。
「落ち着け、落ち着け……」
リリアは深く深呼吸した。
そして再びリヴァイの体を見る。
首筋に手を当て脈をみると確認できた。リヴァイはまだ生きている。